(文久二戌十一月 島原藩士坂本是政将にかはりてよめる)(1862年) |
蜻島日本国は 天地の神相うつのひ 皇祖神の御霊扶け 物部の人相集ひ 天皇に仕奉る国そ
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恐きや吾大王の 行知す 天下に 国はしも多にあれとも 城はしも多くあれとも 馬の爪
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筑紫の国は 天地日月と共に 足りゆかむ神の御面と 国毎に神の名負し 御名ことに
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国の名かゝす 其中に別き細き 白縫肥前国の玉勝間 島原城ハも 天皇の遠朝廷
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敵守る押塞の城そと 東の幕府の 貴くも仕たまひ 畏くも依賜へれ
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負持し国しき守らす 吾君の遠つ神祖の命ハも 東照神尊に 内部につかへまつり |
外部にたち侍らひ不奉仕国を治むと 千早旧人をやはすと 御軍の真前に |
かへりミす 御楯となりて ゆゝしくも奉仕れる 丈夫の命にしあれは |
そこたくの国負持し 幾許も恵玉へれ
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生ませる御子の数々 継嗣継に 木綿花の栄えいまさひ 御民をら愛つみ玉へれ
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奉仕る臣も奴も 布ませる国も県も 万代にかくしもかもと 御仁政仰てまつに |
迷言の狂言とかも 出る日の暮ぬること 照月の雲かくること 行水の 留めもえねハ
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紅葉の過(キ)ましにけれ
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昼ハも嘆かひくらし 夜ハもいき衝し なけゝともしるしなみ 曇り夜の迷へるほとに |
有職の人のこと/\ 言計りはかり定めて 鳥かなく東国ニ 国ハしも多にあれとも
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君ハしも多くませとも 衣袖の 常陸の国ハ 武士の健甕槌大神の鎮坐います 霊国
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畏き国 美しき国のこと/\ 布坐る水戸君ハも 古への実事を偲はし
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血速旧神を厳し 天下国のそき 服ハぬ蝦夷か輩を はき清め 言向和し
敷島の日本魂を天皇辺に極めつくし 剣太刀 いよ磨置て 大将軍の御楯とならむと
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言立し 清きその名は 天地に多響き 足つる丈夫のたけき君なれ
生ませる 御子ハことさら ゆゝしく智り賢し 恐きや 其御子をしも
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山鶴の迎へ参入越し 嗣の樹の 継て立つれ
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曇りよの明ゆくごと 朝月夜赤き心を 人皆のつかへまつろふ
そを見れは あやに忌しみ 此を思へハ 弥乏しみ
頑固蝦夷かともの 千万の軍あともひ 大船の舳ゆも艫ゆも火矢放ちすゝしきほひて
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おほゝしく今もよせてハ 天地の神をこひのみ 御軍の真前に立(チ)焼刀の 手柄押ねり
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白真弓靭取負て 神風の息吹迷はす 天雲の霧ふ火中ゆ 投矢もち海に射しつめ
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打さため 払ひ平らけ 日の本の日本の国の 神稜威の畏き事を 丈夫の敵す手内を 天雲の
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向伏極み 天地の至れるまてに 蝦夷等か聞迷ふまて たふれちる見おつる迄に
神風に伊吹まとはし 天雲にいひはふらして 海行ハ水漬屍 陸ゆかハ草生屍
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天皇に つかへまつり 吾君の御楯とならむと 思ひきわめ羊蹄
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△海行かば水漬く屍山行かば草むす屍大君の辺にこそ死なめ(万4094) (大伴家持)
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